奥田塾参加vol.3 奥田塾に参加する。

さてさて、奥田塾シリーズ第三弾。


ようやく奥田塾にいく日に相成りました。
汚れてOKのズボンをはき、同じく汚れてもいいエプロンと、
先日日暮里で買った3mのモッサーを持ち、
一日遠征になるので果物たんまり、長い旅路なので、本と、
あいにくの天気、というi-phone情報もあったので、
傘に、長靴という重装備で、5時台の電車に乗りました。

で、間ははしょって、
8時40分くらいに八王子到着。
八王子では、お昼ご飯のパンも買い荷物がさらに増え、
もうすでにふらふらです。ようやく9時10分くらいに
八王子の奥田染工場到着。


奥田染工場自体は歴史を感じさせる
味のある風情で、いったんは見逃して行き過ぎてしまったほど。
平屋建てのトタンの建物がいくつか集まっています。
しかし結構な雨で長靴大活躍。
工場の入り口から中まで大分水浸しです。
というかシルクスクリーン講習じたい
シルクスクリーンの枠をじゃばじゃば洗うので、
長靴必須でした。

まずは控えの棟の和室に集合して
今日の実習の内容を聞きます。
しかしものでぎゅうぎゅうの和室にも
無造作に「ミントデザインズ」とかかれた布が
置いてあったり、なんかクリエイティブな工場だわ。

電話で言っていたとおり、
今日は「酸性染料のプリント」
奥田染工場の奥田さんが説明してくれます。

とはいいつつも、
専門的知識過ぎて、書き留めるものの、
いまいち体系立てて理解できません。
むーう。初心者とはこのようなものかの。

なんとなくわかったのが、
糊っていうのがプリントには大事で、
それがそれぞれの工場が秘密に隠し持っているもの。
それぞれの素材にあわせて上手にプリントできる秘訣は
糊にあるらしく、シルクなんかに使う今回の糊と、
綿のプリント(反応染料?)に使う糊とじゃ違うみたい。

だから学校の授業とか教科書なんかじゃ
絶対に分からない、んだそうな。

今日奥田塾で使う糊も、近くの工場からもらってきた糊だそうで、
工場にもやっぱり得意なジャンルのプリント、
あまりやらないプリントってのがあるらしくて、
「うちはあんまりシルクやらないからねー」と奥田さんが
言っていたような、いなかったような。

参加者は約10人で、
ずーっと通われている、っていうベテランの女性の方たちがいたり、
グラフィックデザインをやっているっていう人がいたり、
イギリスでテキスタイル勉強してました、って人達がいたり、様々。
といっても、やっぱり何かしらみんな
ものづくりに関わっている人たちでしたよ。

で、初心者は金魚の糞のように
工場内部に移動。ホームページで見た
あの捺染台がバーンと並ぶ場所です。

(こないだとおんなじ写真…。)

で、ここにまず布を置きつつ、
外にシルクスクリーンの枠を選びに行きます。

シルクスクリーンの詳しい説明は言葉だと結局複雑なので、
ほかに譲りたいですが、とりあえず型枠というものが必要で、
それを布に乗せて、色糊をスキジーで乗せていく、というのが
シルクスクリーンです。(ああ、舌っ足らず。)

でもまあ、私もそうでしたが、
いっくらネットでシルクスクリーンのやり方を読んでも
なんかよく分からないと思っていて、もどかしかったですが、
今回行ってみてよく分かった。
百聞は一見に如かず。

あんなによく分からなかった型ってのも、
ああこういうものなのね、ってまったく納得。
まあ一番近い雰囲気としては、アルミの枠なので、
アルミ枠の網戸みたいな雰囲気。そこに何か模様が描かれている
という風情です。


この工場は染専門なので、このスクリーン枠というのは
作らず、別の枠専門の工場で作るんだとか。
でもさすがに染工場だけあって、多分いらなくなった枠とか、
今使っている枠とかがありとあらゆるところに差し込んである感じ。
こりゃ整理整頓大変だわ…。

そんなわけで裏手に回って、自由に使っていいスクリーン枠置き場で
自分の使いたいデザインの枠を探します。
私は前回の捺染教室の反省を生かし、
シンプルに自分が素直に可愛いと思える柄と色の布を作りたい、
と思っていたので、ちょっと悩んだ末、
ベーシックなドット(水玉)柄を選ぶことにしました。
ただ、ドットのサイズをふたつ組み合わせることで、
ちょっと変化を狙うことに…。

捺染場に戻ると、ベテラン職人のFさんがみなさんの布を
捺染台に貼ってくださっています。
これも、素人がやると、
布の言うことを聞かずに引っ張りすぎて、
その引っ張っているところにプリントしてしまうので、
蒸して、洗って、乾かしてと仕上げてみると
柄が曲がってたりするんだとか。
なんか、布の言うことを聞かない、っていう言い回しが粋ですね。

捺染台の上は厚手の透明ビニールが敷かれていて
(汚れたら取り替えられるようにかな?)ここがほんの少し粘着するのです。
なので、斜めになっていても、つるつるする布でも滑らず
ピンと貼れるという訳。何でもこの捺染台はとても小さな穴があいていて
使い終わると水が出てきて簡単に掃除もできるんだとか。
さらに捺染台の下には捺染台を暖められる管?がついていて、
これの電源を入れるとプリントしたばかりの布も
あっという間に乾くそうです。のんびり待ってたんじゃ、仕事も進まないものねぇ。
といいつつも、このヒーティングシステムのおかげで、
夏は50℃を超すとか…。しんどそう〜。

上の写真が選んだ枠(小さい水玉)と布を捺染台に貼り終わったところ。
さらにこの枠のリピートを考えて、
捺染台についている器具をリピートの幅に設置します。
そうすると摺るときにこの器具に枠の出っ張りを引っ掛けるだけで、
位置あわせもらくらく、という便利な代物。
といいつつも、自分でもまだリピートの合わせ方は分からず、
Fさんがすべてやってくれました。
しかし、言葉でものを説明するって難しい…。

次は色糊を作ります。
慣れてくれば、糊作りにも加われるんでしょうが、
何せ初めてだったので、型を選んで、布を貼って貰って、
リピートあわせしてもらっているうちに、
ベテランの方々が糊を混ぜて捺染場に持ってきてくれていました。

色を薄くしたい(=彩度を落としたい)時に使う何も入っていない糊と、
色糊です。基本の色が作ってあって、(赤・青・緑・黄色・茶色・などなど)
それを自由に混ぜて色を作っていきます。

しかしここでcheeleeはあまりにノープランで来たために
はた、と止まってしまいました。
ど、ど、どうしよう。
使えそうなウールの布にしたものの、さて何を作るんだろう??と。

ただ、今回の目標は、先ほども書いたように、
シンプルに自分が素直に可愛いと思える柄と色の布を作りたい、
ということなので、
濃い青と薄い青、濃い緑と薄い緑、濃い青と薄いグレー、
濃いピンクと薄いグレー、シルバーと青…etc、などなど
いろいろ考えた末、
もう、ベーシックに可愛い!ってびついてしまうピンクとブルーにすることにしました。
そして子供用のコートにすることに決定。
(といいつつも、子供にモッサーのコートなんて
どうせ汚しちゃってもったいない!と結局思い至ったので、
今は子供用に何か作るのはやめることにしそうです…。)
まあとりあえず、このときはコートにしようと思っていました。

で、色糊を混ぜます。何も入っていない糊に、赤をほんのちょっと入れてぐるぐる。
たくさんつくってぐるぐる。って、すごい感覚的な作り方なのねー。
商品にする糊はもうちょっときちんと色を出すんだろうけど、
講習で作った色糊はとってもラフな作り方でした。
前回の捺染教室で、先生が分銅を使って、色粉をきっちり計っていたのと大違い。
実際仕上がってみないとどんな色になるか大まかにしか
想像できません。ってな訳で、これが混ぜた色糊。

もうこの時点でお昼。しかも染まりやすくするために浸透剤を入れてください、
ってことになって、枠の糊受けに流し込んだのを再度集めて、
枠を洗うことに。おお、なかなか時間かかるぞ。
お昼前に一回刷ってしまいたかったので、弱る体力に鞭打って
奥田さんに最初の一回目刷りのお手本を見せてもらう。

なるほどー、下から上なんだ。角度45度くらいなんだ。
とぼーっと見てる間にあっという間に一回刷り上る。
乾いていない色糊が枠について布を汚さないように、飛び飛びで刷る。
1,3,5というように。2刷り目の3の位置。
次は見てもらいながら自分でする。
うーん、力加減が難しい。軽くやりすぎて、
たくさんスキージの間から流れていってしまう。とは言いつつも2刷り目完成。

乾かしている間にとりあえずお昼。
お昼もそこそこに、刷りに戻ります。なんせ一番びりっけつっぽいので。

さっきの刷りは奇数、乾いた今回は偶数の箇所をすります。
2,4,6っていうように。
あまりうまく乗らないなぁと思って、同じ場所で三回刷ったら、
サーモンピンクのはずが真っ赤な色に。
やばい、同じ場所何回も刷っちゃうと色変わるんだ。
で、次はなるたけ一回でいくように努力。

無事、小さいドットの型枠を刷り終りました。
シルクスクリーンの型を洗い場でジャブジャブと洗い、
大きいドットの型枠をセットしてもらいます。
その隙に青の色を混ぜます。
今度も何も入っていない糊を大量に使えばいいのねー、ふんふんふーん♪と
なれた調子でやっていると、Fさんから、
これもうグレイに近い色になってるよ、とのこと。
キャー…。そうなの?青じゃないの??
それにいろいろと混ぜて(赤やら緑やら)復元をはかります。
一応戻った気もしたので、たくさん作っちゃった手前、
捨てるのももったいないから刷ってみることに。

でも、刷ってみると、青というよりも
黒っぽい紫みたい(;。;)
うう、やだー、もっとターコイズっぽい鮮やかな色がいいんだよー。
というわけで、紫とターコイズを飛ばし飛ばしですることにしました。
また、枠を洗いにいき、色を混ぜて、と、
シルクスクリーンって体力勝負だなー。
この時点で1時40分過ぎ。2時半くらいには蒸し器にかけるというので、
焦りがあります。

ターコイズをすると、こちらが思っていたきれいな青。
これこれこれ〜!と思っていましたが、黒っぽく見えていた紫のほうも、乾いてくると
なんだか紫でよい雰囲気。うん、わるくないねぇ。

と惚れ惚れするのもつかの間、
cheeleeがもっていった布は140cmくらいの幅だったので、
110cmほどしかない捺染台からはみ出すほど。一度ひっくり返してもらわないと
全部の面を刷れません。ということで、ターコイズを刷って、乾いたら
大急ぎでひっくり返します。

布をひっくり返すFさん。何も刷れていない布地が
捺染台からはみ出して一回では刷れなかった部分。
こういう物理的な面に左右されるもんなんですね。
結構アナログなんだ。


蒸し器に入れる時間は迫っています。
30cmほどの面はもう2つの型を悠長に刷っている暇はないので、
大きいドットの型だけ刷ります。
色も、紫とターコイズ作っている暇はないので、
原色を使っていたターコイズのみ。
考察が足りないと、こういう時間的な問題ですべての作品が出来上がるのねー。
結構瞬間勝負なのね〜。となんだか、思ったり。

とりあえず大急ぎで残りの面を刷り、最後の最後で蒸し器に入れてもらいました。
はー、とりあえず終わった、よかったよかった。


蒸し器で一時間蒸している間、
教室に来ていた人たちとコーヒー片手におしゃべり。
ああ疲れた、となんだか初対面同士なんですが、
充実感とともに話も弾みます。
イギリス帰りの二人と、あるメーカーでデザインしている一人。
うーん、皆さん、クリエイティブですわ。
何かできる人がいればスカウトする、を最近の目標としているcheeleeeは
三人の連絡先をGETしました。

一時間待ち、蒸しあがり、次は洗い。
奥田さんをはじめ、手伝いの研修生やOBっぽい男子達が
じゃぶじゃぶと布を洗います。
今日は、シルクの人が多くてそうでもなさそうだけど、
cheeleeeが作ったウールのモッサー布は重そうだ…。
汚染防止剤が入った桶などトータル3回洗いをして、最後に乾燥。

出来上がってきたときは、
やっぱりうれしかったですねー。可愛いよ〜。
いまいちかな、って思ってた紫も、乾かしてみるとちょっと彩度が薄くなって、
いい紫。ピンクとの組み合わせもいい感じ。
もちろん青とピンクも可愛い。
[:W360]


そんなわけで、全部終わったのは17:00過ぎ。
もうだいぶ暗くなってきているころでした。
奥田さんをはじめ、お世話になった人たちにお礼を言い、
仲良くなったみんなと、わいわい言いながら八王子まで行くバスに乗り、
テキスタイルについてわいわい言いながら中央線をさかのぼり、
バイバイし、ようやくうちに着いたのはもう夜9時になっていました。

いやー、楽しかった。
何はともあれ、自分で作ったかわいい布ちゃんには
見るたびわくわくさせられます。ほお擦りしちゃいたいくらい。
一日に何回か見に行って、かわいいなー、って言っちゃう。
さあこれで何を作ろうかなぁ。
ああ、ものづくりって楽しい〜。